福島県での取り組み

◇原発事故の影響

 福島県は、東日本大震災時、地震、津波により甚大な被害を受けたほか、東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射線汚染により未曽有の被害を受けました。第一原発の周辺地域は現在も避難区域に指定され、97,333人が、震災から5年経った今でも避難生活を余儀なくされていました(平成28年3月28日福島県災害対策本部発表資料)。また、福島県全体の震災関連死(震災の直接的被害ではなく疲労や環境悪化などの間接的な原因で死亡する)の死者数は2,037人にのぼり、他県と比較しても突出して多くなっています(平成28年3月28日福島県災害対策本部発表資料)。これは、長引く避難生活のストレスが起因しているためと考えられます。

 川内村、楢葉町のように、一部避難指示が解除され帰還が始まった地域もありますが、これもインフラ整備や若い世代の不在、住民間の意識の差など様々な問題があり、一概に良かったと喜ぶことはできない現状があります。震災から5年経った今、福島の抱える問題は、ますます多様な姿を見せています。

 

◇支援の取り組み

 震災以降、福島県でも多くの人が被災した方の支援に携わっており、復旧活動の手伝いや、仮設住宅での生活のサポート、子供を持つ家庭のための子育て・学習支援などが行われてきました。しかし、福島県で活動するボランティアの数は宮城県や岩手県に比べて少なく、現在も多くの支援を必要としています。

 SCRUMでは、2013年から取り組んでおり、現在は「福興youth」というグループで、主にいわき市の泉玉露仮設住宅と薄磯地区で活動を行っています。

 

◇泉玉露仮設での活動

 いわき市にある泉玉露仮設住宅には、双葉郡富岡町から避難してきた方がたがお住まいです。「富岡3・11を語る会」という語り部の団体があり、美しい桜並木で有名だった富岡町の震災前の姿、被害の記憶を後世につないでいます。また富岡町からいわき市へ引っ越された方がたの交流の場として、「泉玉露交流サロン」という施設があります。

 私たちは、仮設住宅の集会所で開かれているカフェに参加し、また一軒ずつお宅を回って清掃ボランティアをしています。「交流サロン」では、去年の夏に流しそうめんのイベントも企画しました。

 

◇薄磯地区での活動

 薄磯地区は、いわき市南東部の海岸に位置する地域です。東日本大震災による津波被害を大きく受け、薄磯地区だけでいわき市の死者数の約1/3もの方が命を落としました。薄磯地区では、復興協議会を設立し、復興に向けて歩んでいます。

 私たちは、地区内の復興公営住宅の集会所で、足湯・手芸カフェ活動などをさせてもらい、地域住民の方と交流しています。薄磯地区で活動している立教大学の学生や、NPOとの交流も行いました。これからもこういった活動に加え、地域の行事への参加などで、薄磯の復興に協力していきたいと思います。

 

◇福島についての読書会・学習会

 「○○町の避難指示が解除になり、帰還がはじまりました」「福島県沖で実施されている試験操業の海域が拡大されました」「災害公営住宅が完成し、入居を待ち望んでいた住民が次々と…」などの「明るい」ニュースが流れるようになった昨今、私たちが考えるべきことは、それは本当に喜ばしいことなのか、ということではないでしょうか。震災から5年、福島の問題は、複雑化・多様化を見せています。

 ボランティア活動をする上でも、そうした複雑さへの理解は欠かせません。そのため、東北大学内で読書会や学習会を行なっています。読書会だけでも参加できますので、お気軽にご参加ください。

 

◇スタディツアー・福島大学との交流

 2013年度より1年に1度のペースで留学生向けのツアーを実施し、2015年6月も「留学生と共に行く福島スタディツアー」を実施、23人が参加しました。果樹園やエネルギー施設を訪れたほか、福島市内の小学校で給食に使われる食材のモニタリングの様子を見学し、その後小学生と一緒に給食を食べました。

 また、12月には「福島大学災害ボランティアセンター」と合同で福島市内の仮設住宅で清掃ボランティアを実施しました。活動終了後の交流会では、それぞれの団体の活動報告を行ない、ボランティアのあり方などについて意見交換を行ないました。

 

*過去の活動の具体的な内容については、こちらをご参照ください!


2016年度新歓ツアー報告

 福島部門では、4~5月に2つのツアーを行いました。

 まず、4月10日に、富岡スタディーツアーを行いました。このツアーでは、福島第一原発事故により現在も全町避難が続けられている富岡町を視察し、富岡町の現状や、町民の方々の思いなどについて学びました。富岡町の桜の名所・夜ノ森地区では、住民の方の思いが詰まった満開の桜を見ることができました。

 また、5月3日~5日に、福島ボランティアツアーを行いました。津波により甚大な被害を受けたいわき市平薄磯地区にて、神社の例大祭に神輿の担ぎ手として参加しました。天気もよく、祭りに来ていた住民の方と沢山交流することができました。また3日目には富岡町を視察し、富岡町の方が入居されているいわき市泉玉露仮設住宅で清掃活動を行いました。福島県の抱える津波・原発の両問題について、学ぶことができた3日間でした。

中澤恵(教育学部2年)